ここは『やまやくらぶ』秘密の部屋。
更新しても気づかれないので、誰にも知られるはずのないコーナー。
迷い込んだ方も、ココをクリックすればすぐに出ることができます。

 

そして、くれぐれもこのコーナーのことは内密に・・・。

 

このまま読み進める方は、覚悟してください。
このコーナーは、全てのみなさんに楽しんでいただけるという自信がございません。
それでは第25回、はじまりはじまり。

 

 

本日のお題はこちら。

【歴史から忽然と消えたモノ】

 

歴史上に名を残す、著名な宝石たちがある。

名だたる美術館で世界中の愛好家を愉しませてくれている。

 

さてそれらの中には、美術館に所有されるどころか、

「今どこにあり、誰に所有されているか、まったくわからない」

という宝石も多くある。

 

かつて王族や名門一族に所有され、文献に記され、絵画に描かれた宝石が、

ある日に忽然と姿を消し、それ以後の歴史にいっさい出てこないわけだ。

 

栄枯盛衰の果てに名門一族の名とともに放棄された宝。

人知れずそれを手に入れ、それが孕んだ歴史も美しさも、

一人で独占しているじつに羨ましい人が世界のどこかにいると考えると、

ワクワクする。

 

そしてそんな人物も、宝を手放す時が訪れるのが時代の渦というもの。

 

そんな宝石が、突如として香港やロンドンのオークションリストにあがってくるときがある。

歴史から消えていたモノが、数百年ぶりに現代史に現れる瞬間である。

実在していたことに歓喜する者、歴史を紐解く旅に出る者、美しさに魅了される者。

宝飾史の研究者のみならず、愛好家も投資家も入り乱れ、オークションは沸き立つ。

 

お祭り騒ぎで盛り上がる、この市場の歓喜は、ある一族の悲劇の上に成り立っている。

破産や離婚、一家の崩壊という不幸が、闇に隠れた美術品が現代史に甦る幸運と結びつく。

 

いつも人のそばにあり、人類の歩みを傍観してきた宝石たち、

ひとしきり現代人をにぎわせ、そしてまた歴史から姿を消すのである。 

 

つづく。
何かが見えるまで。内藤。

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【ほぼ内藤わたり】-第25球目-