ここは『やまやくらぶ』秘密の部屋。
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そして、くれぐれもこのコーナーのことは内密に・・・。

 

このまま読み進める方は、覚悟してください。
このコーナーでは、みなさんに楽しんでいただける自信がございません。
それでは第23回、はじまりはじまり。

  

 

本日のお題はこちら。

ニューヨーク紀行 -Episode2-】~いつか話せよ、君の道を~ 

 

ニューヨーク・ウォール街、
世界的な投資家ウォーレンバフェット氏に言わせると、

 

ここはロールスロイスの後部座席に乗ってやってくる人が、
地下鉄で通勤している連中からお金のアドバイスをうけている、
世界で唯一の場所。

 

マンハッタン島の南端部、
ロウアーマンハッタンと呼ばれるエリアにあるウォール街から、
全米のみならず世界に拡がった大規模なデモは記憶に新しいだろう。

 

数年前に訪れた時に比べれば、
あきらかに沈滞ムードがこの場を満たしている。
いまや、お金の流動性も人々の活気も、
この金融街から西海岸のシリコンバレーへ移ってしまった。

 

ふと、ある男のことを思い出した・・・
長期にわたり私にダイヤモンドの手配をしていたシャイというユダヤ人だ。
高品質のカラーダイヤモンドをはじめ、
珍しいカットが施されたビッグストーンの数々は、
多くの弥馬屋ファンにとても喜んでもらえた。

 

彼とはしだいにビジネスを超えた話もするようになり、
駆け出しの頃の苦労話などでは大いに盛り上がった。
なかでも彼のヘブライ語の授業は実に楽しい時間だったのを思い出す。

 

ところがある日、商談をすませると彼は私に、
その日の取引が最後になる旨を打ち明けた。
ダイヤモンド商をやめて、ニューヨークで金融業界の道を歩むと言う。

 

彼を引きとめる理由は無い。
近い未来での再会を約束するかたい握手をし、
野心に満ちたいつもより大きく見えるシャイの背中を見送った。

 

・・・それから5年、
ウォーレンバフェットが金融大量破壊兵器と揶揄した
『CDS』に代表されるデリバティブの焦げ付きは巨額に膨れ上がり、
シャイの選んだ道はまさしくイバラの道と化した。

 

今、ここウォール街に立ち、急ぎ足で行き交う人々にもまれながら、
その中にシャイの後ろ姿を探している。
だが、この街ではもはや、あの野心に満ちた大きな背中をした人など、
影すらみつけられない・・・。

 

次号【Episode3】へつづく。
何かが見えるまで。内藤。

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【ほぼ内藤わたり】-第23球目-