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著書【宝石の裏側 vol.4】

宝石の裏側-第4話- 【二重価格・ディスカウント】 

二重価格・ディスカウント

 

宝石の裏側-第4話- 【二重価格・ディスカウント】

 

 商品は、売り手側と買い手側との商談に合意がみられると取引が成立し、双方に幸福がもたらされます。商談取引のシチュエーションは様々あり、例えば百貨店やスーパーのバーゲン会場、ホテルなどで催されるフェアや、売り手側が外商として訪問する方法、インターネット上で見えない相手との取引など、無限にあります。

  基本的に商品は金銭との交換になるので、価格がついています。この価格に注目してみると、売り手、買い手、双方のもくろみや心理戦を垣間見ることができます。両者が互いに相手の幸福を願う事が理想ですが、なかなかそうもいかないのが今の経済の現実で、両者は自分の幸福のみを追い求めてしまうものです。

・・・つづく。

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 OBSCURITY -不明瞭-

 

 商品には表示価格と実際の取引価格があり、値札についている価格を表示どおりに販売している店もあれば、交渉しだいで値引きする店も多くあります。商品の値札についている価格は、売り手の事情や買い手の事情に合わせて様々な決定価格で販売されています。値引き交渉に因らないで、はじめから割引率を設定して販売する店、値札価格を二重表示にして販売する店も極めて多いのです。

  一般に商品の価格にはメーカーのつける小売希望価格というものがあります。消費者はこの希望価格にくらべて実際の販売価格がどの程度安いか判断できるでしょう。例えば電気製品や自動車などは小売希望価格が消費者に了解されているので、値引き幅の程度を知るのに基準となります。しかしジュエリーの場合にはこの基準を定めることが容易に出来ません。デザインやフォルムが同じであっても使用されている天然の素材に同じものが無いからです。

  消費者がジュエリーを求める場合に、特にその表示価格に対して明確な判断が出来ず惑わされやすいのは、ジュエリーの価格は一般的に認められている希望小売価格を確定しにくいからです。この不明確さを利用して、売り手側はあらゆる手法で客寄せを実行します。そして買い手側もジュエリーの購入にあたって、この判断しにくい表示価格のために悪戦苦闘しながら、客寄せ価格の欺瞞性と幻惑性を払拭しようとつとめるのです。この客寄せ価格こそが二重価格の本質なのであります。

・・・つづく。

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CASE A~C -出来事-

 

Case A
『K18ダイヤプチネックレス(0.3ct)、128.000円が50.000円の超特価に。(K店)』

『PTダイヤプチネックレス50万円が9万9800円の超目玉に。(ジュエリーM)』

 Case B
『K18・PT900ダイヤリング(0.3ct、鑑定書付)、メーカー希望価格298.000円が67%OFFの98.000円で。(ジュエリーK)』

『プラチナルビー・ダイヤモンドリング、非会員価格350.000円が会員価格で90%引きの34.980円。(ジュエリーM)』

Case C
『よその店で25万円のものが当店では25.000円で揃います。(ジュエリーM)』

『他店より高い商品がありましたら、返品をお受けいたします。ただし同じデザイン、素材、カラット数で、お買い上げ後1週間以内に限らせていただきます。(ジュエリーM)』

・・・つづく。

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 EXAMINATION A~C -考察-

 

 日常頻繁に見られるこの種の広告は、売り手側にどのような事情と目算があるにせよ、価格操作の手法で消費者の購買欲を誘い、客寄せによる販売実績を高めようとするものです。二重価格やディスカウント価格の狙いは、買い得な商品を提供することよりも、まず二重に表示した価格差によって消費者の購買欲を引き付けようとするものであります。

 価格差を『買い得度』として思い込ませるのが二重価格やディスカウントの本音であるのです。価格差が大きければ大きいほど消費者の儲けになるかのような価格操作と、良品を安く提供するという品物本位の価格とは根本的に異なります。

  売り手側は商品の安売りを印象付けるため、さまざまな表示を駆使して二重価格販売やディスカウント販売を実行します。安売り販売は、前述のように売り手側が作為的に安売りを印象付ける価格操作によって実行する場合もあれば、実際の営業上、純粋に売り上げの向上を目指して安売り販売を企画する場合もあります。買い手であるお客様の目をごまかす為の価格操作についてはここで論ずるには値しないので省きます。

・・・つづく。

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 REASON -動機-

 

 一般に、売り上げ向上を狙って廉価販売を企画する場合、次のような動機や理由で展開されます。

1:正規の通常価格をディスカウントする場合。
様々なイベントセールに合わせて在庫商品をディスカウント価格に設定し、売り上げの拡大と在庫の回転率を高めようとするとき。

2:質流れ品や倒産品などの流通原価の崩れた商品を安売りする場合。
一度製品化された商品がそのコストを割るのは一般的には金融処分された時です。処分価格は最初の制作費の十分の一以下になってしまう物もあるでしょう。これらの商品は金融処分時の取引価格がその商品の原価となるので、売り手側はこのような金融処分品を、元来その製品が付けられていたであろう価格と対比させながら販売することになります。

3:価格競争に対抗して、はじめから原石の仕入れや制作費まで安いコストで商品化する場合。
製品化をいかに安いコストで実現するかがこの場合のテーマです。つまり原価の低コスト競争に勝つことで価格競争に対抗していくのです。

  ジュエリーの売り手は安売り販売の企画を上記のような要件を満たして行い、売り上げ増加を狙い、回転率を効果的に高めようと企てます。そして売り手によっては客寄せ効果を高めるために、宣伝や広告上の表示価格を極端に操作することもあります。

・・・つづく。

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 PROBE -見極める-

 

  正規の通常価格をディスカウントする場合(先の1)について言えば、消費者はその二重価格に惑わされることなく、その商品のリーズナブルな納得価格を見極めるように努めることが重要です。売り手は店の信用とのれんをかけて堅実に安売りを実行し、お客様のさらなる信頼を得ようとする場合もあれば、デッドストックを処分してしまいたい為にディスカウントする場合もあります。いずれにしても消費者はその商品の値段が安いことだけではなく、品物が良いことを見極めて買い求め、二重価格の価格差やディスカウントの率に惑わされないことが重要であります。

  そのためにはすでに述べたように『品質の良さ』『デザインの良さ』『作りの良さ』など商品全体の品格が買い求める実際の価格と適合していなくてはなりません。そしてそれを見極めることは、消費者がジュエリーを求める際に、重要な姿勢です。とくに今回のケースのような、価格操作の行われやすい二重価格やディスカウント商品を買い求める場合には、いっそう重要なことなのです。

・・・つづく。

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 IMAGE -イメージ-

 

  質流れ品や倒産品などの流通原価の崩れた商品を安売りする場合(先の2)についても、まず良い品を選ぶことが当然であります。しかしここで最も重大な問題は、求めた商品が倒産品であり、質流れ品であるというイメージをどのようにしても取り去ることが出来ないことです。
 ジュエリーを永く愛用し持ち続ける時、そのジュエリーに込められているイメージやエピソードを大切にする愛用者にとっては、そのジュエリーとの最初の出会いがきわめて重要であります。それは最初の出会いが最も強力なイメージとなってそのジュエリーに刻印されるからです。ジュエリーが良い品で、安価であったとしても、それが心地よいイメージを増幅し続けなければ、その愛用者にとって価値はないのです。

 したがって今回の場合でジュエリーを買い求めた時は、求めた商品の買い得さに加えて、その商品に付着してしまう出会いのイメージ、つまり質流れ品や倒産品であることを了解し、納得し、割り切れることが必要です。納得できるならばそこで求めたジュエリーが過去にどのような運命と経緯をたどり、どのようなストーリーを内包しているとしても、全ては新しいオーナーと共にその価値を増幅することになります。

 ダイヤモンドの王様と呼ばれるハリー・ウィンストンのように、質屋で求めた25セントのエメラルドが800ドルで販売できる程の価値のあるものだと見抜くことが出来れば、たとえ彼のように一流の宝石商にはなれなくても、自分の求めたジュエリーの値打ちに酔いしれる事が出来るでしょう。

  しかし一般には質流れ品とは、流される程度の価値であり、倒産品は処分される程度の価値でしかありません。売り手は特別な理由がない限り優れた品物を流したり、処分したりはしません。コレクションとしてオークションにかけることはあっても、金融処分することはないのです。ディスカウントされる商品はその資質(品質、デザイン、加工技術)そのものが、製品化された時点からディスカウントされる程度の物だったといえます。このことに関してさらに注意すべきことは、ディスカウント品を身につければ自らの品格をその品物に合わせてディスカウントしていると受け取られることでしょう。

 近頃、淡水真珠のネックレスや喜平の地金ネックレスを、自分の品格のシンボルとしてつけているジュエリー愛用者を見かけなくなりました。これは淡水のネックレスや喜平の地金ネックレスが、ジュエリー販売のほとんどの催事場で釣り師の撒き餌のように氾濫し、その価値だけでなく同時にそのイメージをもディスカウントされてしまったからです。堕ちたイメージのジュエリーを自分のおしゃれに使う愛用者はいません。

 ジュエリーという物は豊かさのシンボルである時に初めてその存在価値を持つものです。ここでいう豊かさの意味は、そのジュエリーをつけたり持ったりする人の内面的な豊かさのことをいいます。つける人の内面の豊かさが、ジュエリーに形態をとってシンボル化されているとき、そのジュエリーは価値を発生するのです。したがって二重価格とディスカウント価格の商品に染色されているイメージについて、買い手は十分に注目し、注意しなくてはなりません。買い求めようとしているその商品が、自分の内面的豊かさを形象しうるかどうか、冷静に見分ける必要があるのです。

・・・つづく。

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SUNDRIES -雑貨-

 

 価格競争に対抗して、はじめから原石の仕入れや制作費まで安いコストで商品化する場合(先の3)では、売り手が、扱う商品を安く設定しようとする企画が、流通上の理由や販売戦略上で持ち上がってくるのではなく、最初から製造上の課題として登場する状態です。

  価格競争に打ち勝つためにメーカーは原石の買い付け、安価な地金の使用法、加工費の低減化につとめます。国内に170店舗以上を持つといわれるジュエリーT社は以前、安さの秘密として次のように自社宣伝しています。

『わが社は年間、金6トン、海外より直接買い付けした宝石50万カラットを使用し、自社工場で130万本の指輪を一貫生産、デザインから販売にいたるまで、すべて自社内で行っています。』

 商品価格の低廉化を至上命令としている価格競争の世界では、ジュエリーとしての機能面で通常の使用頻度に耐え、ジュエリーとしてのデザインの一般的なモデルをクリア出来ていれば、残る問題はいかに低価格で店頭に送り出せる商品を作れるかであります。
 ところがこの価格の低廉化とジュエリーの実質的価値とは逆比例してしまうのです。コストを下げれば下げるほどジュエリーの品質は損なわれていきます。ジュエリーの価値はその希少性にあるものにもかかわらず、価格競争が大量製造を強いることになるからであります。また、ジュエリーの価値はその職人の技術の高度さにもあり、芸術品にまで高まろうとする技術的な志向を有しているにもかかわらず、価格競争は工賃の低廉化をよぎなくさせ、このことがジュエリーを粗悪な雑貨品に転落させてしまう現実があります。

 消費者はこの類の、安いコストで製造された商品を求める際には、特に次のことに注意すべきです。まず使用している素材が粗悪なものでないか否か、日常の使用または長期の使用に耐えられるような地金の量と作りであるか。そして加工上の仕上がりが細部にわたってゆきとどいているか否か。さらにデザインが自分の身体的プロポーションや内面的趣向と合致するか否か。これらを十分に判断した上で購入する必要があります。

・・・つづく。

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 INTENTION -意図-

 

 二重価格やディスカウント価格は買い手側の必要性から発生したものではなく、売り手側の都合から発生した価格形態です。この動機と本音は、客寄せと価格操作による幻惑的で意図的な購買者の獲得にあるのです。

  消費者はこの策略に惑わされることの無い様に納得のいく価値と価格のところまで対象物を解析、解明しなければなりません。消費者にとっては二重価格もディスカウント価格も必要なく、ただ正札がワンプライスあれば済むことでなのす。

・・・つづく。

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 PLEASURE -快楽-

 

  ジュエリーの取引は業者間においては実にシリアスであるし、そうあるべきものです。しかし、これと対称的にエンドユーザーとの売り買いにおいては、ゆとりと楽しみがその場の時間をリードします。
 ショッピングは快感以外の何物でもない。ですから買い手は自分の嗜好と趣向を基準にして、商品に表示されている価格について売り手と攻防すればよいのです。一般的に二重価格とディスカウント価格の功罪は、それらが市場に出回っている同じ商品の通常価格よりも安価であるときは消費者に益であり、それらが通常商品よりも粗悪であるときは消費者に損失であるといえます。
 価格の安い事は買い手の利益であるが、品質の悪いことは買い手にとって不利益となる。これはどのような買い物についても言える事であるが、特にジュエリーはその価値を持続させるものであるが故にショッピング後の利益感と不利益感の違いは深刻となってしまいます。

  それでは満足なジュエリーをどのようにしたら見つけられるのか。自他共に認めるジュエリーの社会的な満足感とは、
1:素材のクオリティーが一般的な判断から見て良品であること。
2:デザインが人間の美的感性から見て共通に受け入れられる物であること。
3:制作上の技術的熟練度に優れていて、その触感の良さを誰もが認める物であること。
 このような歴史的に培われた品質評価の常識に自分自身の個人的な嗜好を加えれば、価値ある自分のジュエリーを、たとえディスカウントの中であろうとも見つけることが可能です。

・・・つづく。

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 CASE D~E -出来事-

 

 Case D:40歳位の婦人。K18オープンハートのペンダントを先週T宝石店の50%OFFコーナーで購入した。友人は同じ物をK宝石店で購入したが、その価格が自分の購入価格と同じであった。友人は自分と同じ価格で値札どうりの定価購入をしたという。それ以来、そのペンダントを見るたびに不信感と不快感が思い起こされる。

  Case E:20歳女性。ティファニー社の銀製オープンハートペンダントを都内の有名百貨店ティファニー売り場で求めたが、最近Sディスカウントストアのバッグ売り場で15%引きで販売していた。それ以来そのペンダントをつけなくなった。

・・・つづく。

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 EXAMINATION D~E -考察-

 

 Case Dは、一旦感受した高割引率の買い得感が無残にも崩れ去ったことによる不快であります。また次のCase Eは、ニューヨークという特定な街でしか手に入らなかったブランド品が世界中の主要な都市で入手出来るようになり、やがて地方都市に散在するディスカウントストアで割引販売されるようになった時の価値の崩壊を物語っています。

  Case Dは、買い手自身の不用意も重なって不快となり、Case Eは、販売側の事情で消費者に不快を与える結果となりました。

・・・つづく。

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 ENCOUNTER -出会い-

 

 人がジュエリーと出会うその最初の会合は、そのジュエリーと人との間に簡単には忘れる事の出来ない特別なイメージを植え付けてしまいます。誰かから譲られた物であれ、自分で購入した物であれ、そのジュエリーに込められているイメージが好感をもたらすものであればあるほど愛用者にプラスに働き、その逆であればマイナスに働きます。

 ジュエリーの価値は物としての物質的な価値にとどまること無く、個人的な価値へ増幅されていくのです。したがって宝石売場などで出会う、ジュエリーの売り方や求め方には最初にして決定的なイマジネーションが物語化されてしまうので、特別な注意が要求されます。

  二重価格のジュエリーやディスカウントのジュエリーに出くわした場合には、後々までも刻印されていく、この出会いのストーリーやその後に到来するやもしれぬイメージダウンを十分に見透かしてから購入する必要があります。可能な限り長期にわたって愛用するのがジュエリーです。したがって購入の際に、短期間で飽きてしまう物や、たやすくイメージダウンしてしまう物を購入すべきではありません。

 もしも持っているジュエリーが不快なものであれば、そのジュエリーはその人にとってマイナスであって益にはなりません。むしろその人はそのジュエリーと無縁であった方が良いといえるでしょう。

・・・第5話につづく。

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