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著書【宝石の裏側 vol.6】

宝石の裏側-第6話- 【招待・接待販売】

招待・接待販売

 

宝石の裏側-第6話- 【招待・接待販売】

 

 宝石の買い方は人それぞれ、いろいろであります。人知れず、家族にさえ内緒に買う場合もあれば、自分では売り場に出むかず、外商員に来宅してもらう場合もあります。売り手側からいえば、通り客やはじめて見る客に販売する場合もあれば、なじみの顧客に販売する場合もあります。

 チラシ広告や通販による集客ターゲットは、おもに新規の不特定多数の方に対してです。他方、ダイレクトメールなどによる販売企画は、すでに取引のある馴染みの顧客か、その紹介者などに対して実行されます。様々な顧客に対して多様化する販売戦略に注目してみましょう。

・・・つづく。

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 VARIOUS -様々-

 

 宝石販売を目的とした各種イベントへの招待状は、すでに取引関係の出来上がっている顧客に対して郵送される場合が多いでしょう。この場合、売り手は特定な顧客のニーズやライフスタイル、予算などについてあらかじめ見当がついていますし、買い手も気に入った品物についての品質や価格、アフターケアについて売り手を信頼しています。

  すでに信頼と信用が出来上がっているこの買い物では、買い手にとって乗り越えるべきハードルは二つだけです。ひとつはそのジュエリーが自分にフィットするかどうか。二つ目は価格が買い得かどうかです。
 ところが招待された宝石展示会場で、買い手はこの明白なハードルを確実にクリアできず、不本意な買い物をしてしまうことが多いのです。

・・・つづく。

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 JUDGMENT -判断力-

 

  展示会場に『お客様は神様』として招待される場合において、買い手はその場の雰囲気に高揚してしまい、慎重な判断を欠いてしまう事が多いのです。この様な状況下では判断の冷静さを失いやすく、目移りや心の戸惑いに振り回されます。そして買い手は衝動買いや義理買いに陥ってしまいます。

  宝石展示会場という所は、日常の生活感覚を、きらびやかに振付けられた舞台で拡大し、幻惑してしまう所です。通常このような展示会場では売り手と買い手の信頼関係がすでに出来上がっています。したがって買い手には安心感があり、また商品数も多い事で自分の買いたい物を他と比較しながら選び出すのには好都合なはずです。宝石展示会場でのショッピングの一般的な利点は次のとおり。

売り手と買い手の信頼関係ができあがっていること。
品物のデザインや仕上がり具合について他の商品と比較検討できること。
実際に触って装着できること。
商品の説明を複数の専門家から聞くことができること。

 このように展示会場での買い物は自分のジュエリーを選び出すには格好の機会です。つまりジュエリーを買う場所としては他のどの場合よりも最適であるわけです。しかし逆に気持ちを高ぶらせる会場の雰囲気で、買い物客の冷静な判断力をよわめ、有頂天にさせてしまうのも、このような招待会場の特徴なのです。

・・・つづく。

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CASE A~C -出来事- 

 

 Case A:50代の婦人。招待されたホテルの展示会場で担当者の勧めもあってダイヤモンドのV字型のリングを購入し、他にもブローチとイヤリングを頂いた。
 フランス料理もご馳走になったのでどうしても必要なものではなかったがお付き合いで買わせていただいた。ところがダイヤのリングは腰高で角ばっているので指になじまない為、そのまま箱にいれてある。作り替えたいがそのリングにさらにお金をつぎ込むのは馬鹿らしい気がして決めかねている。そのリングを見るたびに中途半端な気分になって不愉快である。

  Case B:40代女性。百貨店に勤めだした知り合いのお嬢さんから招待状を頂き、友人3人で誘い合わせ、宝石展示会場に行った。宝石売り場を覗いた事は何度かあるが、展示会場で親切、丁寧な接待を受けたのははじめてであった。
 自分は以前から欲しいと思っていた南洋真珠のリングを買った。友人たちにみてもらい、展示会場にいた真珠メーカーの担当者にもみていただいて12mmのシンプルなデザインのものを決めた。リングのサイズが調整されて手元に届き、数日が過ぎてから真珠の脇の所に小さな傷があることに気がついた。気になって友人に見せたところ、真珠には傷があるのがあたりまえで、傷のないのはイミテーションだけよ、と言われた。しかしそのリングをつけるたびに、その傷が気になってしかたがない。

 Case C:60才過ぎの婦人。友人に誘われて宝石展示会で18金のロングネックレスを買い求めた。以前から欲しいと思っていたので良い機会だった。
 自分は大柄だし首周りも太いので短いものは似合わない。周りの人の勧めもあってイタリア製で、ひとコマおきにツヤ消しの加工が施されたデザインに決めた。
 数日が経って別の友人に見せたところ、「それは普段使えるような物ではないね。」と言われた。娘からも「お母さんには似合わないよ。」と言われた。そこで、取り替えてもらうことにして担当のセールスマンに何種類か見せていただいたが、ひと月経ってもどれが良いのか解らなくなったままである。

・・・つづく。

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 EXAMINATION A -考察-

 

  Case Aの婦人はフランス料理とダイヤモンドのリングを天秤にかけたような物です。口から入れた物は、快も不快も一晩で消えうせるが、ジュエリーは一生の間、快もしくは不快のイメージが付きまとうのです。これを計らずに付き合ったのは買い手の不手際でしょう。そして自ら招いた不愉快であるから他人を責めることもできず、逆に付き合わされたジュエリーのほうが迷惑というものです。

  ジュエリーとて石の結晶だけで出来上がっているわけではなく、デザイナーと職人の技の結晶で出来上がっているのだから、それをつくった彼らに対して無礼であります。買い求められたダイヤモンドにしてみれば、別の婦人をオーナーに迎えたほうが幸運であったといえます。
 自分の指に気持ちよく馴染むかどうかという単純な判断力さえも失ってしまうようでは、確かなものを選び抜くことはできません。宝石展示会場の雰囲気で、買い手は見てくれや見栄で品物の選定をしやすいものです。付き合い、見栄、義理や不用意などで商品を買い求めれば、その買い方がストーリーになって後々までもその持ち主に負の影響をあたえ続けます。

・・・つづく。

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 EXAMINATION B -考察-

 

 Case Bの婦人はどうでしょうか。真珠は丸くて輝きの良いものが高価だと言うのは通説です。この意味からすれば、真珠の珠には傷が無い方がよいでしょう。だが実際無傷の真珠は皆無と言っていいほど見つけるのは難しいのです。たいてい穴口の所やリングの爪の下に隠れて傷があります。完璧主義の人であろうとも、どこかで妥協しなければ天然、自然産出物の恩恵にあずかる事はできないでしょう。

  自然の生成のドラマに同じ繰り返しなどなく、森羅万象ことごとく異なっているのが宇宙の摂理というものです。ジュエリーを味わえる人は地球の生成における地殻の変遷のドラマを味わい、受け入れる人であるわけです。このような人は宝石の中にある傷や、真珠のエクボや、変形珠がかえって愛敬のあるものに見え、真珠の表面にできている筋や突起やへこみに自然の呼吸を感じて、『かえって馴染みやすいもの』と受け入れられるでしょう。
 Case Bの婦人は後味の悪い買い方をストーリーにしてしまうよりは、買うときに心おきなく吟味すべきであったといえます。

・・・つづく。

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EXAMINATION C -考察-

 

 Case Cの婦人は自分に似合うジュエリーがどういうものかが分かっていないようです。また、ジュエリーというものは外見を飾る物としか考えていないのでしょう。

  ジュエリーとは自分の内面的な美的感情を共鳴させるものです。したがって自分の素直な心で選んだ物は、他人がどのように批評しようと関係なく、選んだ本人に満足を与えるものです。このような婦人は、ジュエリーに関してだけでなく、持ち物全てに対し、自分の好き嫌いがはっきりしていないタイプでしょう。自分で選ぶ事に主体性がなく、他人が右と言えば右にすすみ、左と言えば左を向いてしまう。風に揺らぐ葦のような心理状態の人でしょう。

・・・つづく。

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OPPORTUNITY -機会-

 

 招待販売の企画者は短時間のビジネスを成功させるために、会場のムード作り、企画商品の選定や大量の商品集め、売り上げノルマ達成の策術などに全力投球します。そこでは販売部の社員だけに留まらず、管理部や経理部門のスタッフにまでも販売ノルマが課せられるのです。社員や店員は自分に課せられたノルマを達成するために、家族、知人、友人や親戚などあらゆるコネクションに働きかけて、客寄せに奮闘します。
 宝石の展示会場はどこでも騒然となるが、ほとんど全ての客が自分の担当者を持っているのでよそよそしい感じはありません。自分の担当者に心情が厚ければ厚いほど、客は義理を感じ担当者の顔を立ててあげようと売り上げに協力する事になります。そこで義理買いにおちいるのです。

  展示会場でジュエリーを買い求めることは、自分から主体的に品物を選び、それが本心から気に入ったものであれば、これほど良い機会はありません。多量な商品類と多様な価格帯は、通常の店のショウケースとは比較にならないほどです。華やかな会場ディスプレイ、きらびやかに輝く宝石と目を見張る新作デザインの数々、ムードを高めるBGMとフランス料理など。

 しかしまたそのときのワインの酔いに心地よくなって、客は予想外の物にまで手を伸ばしてしまいます。もちろんこの予想外の買い物が後になって使用した時、うまくフィットするものであれば幸いであるが、多くの場合、早計だったと反省することになるのです。

・・・つづく。

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VANITY -見栄-

 

 このような会場では女の見栄が火花をちらすのです。隣にいる婦人のエメラルドのリングに気を奪われてしまう女性もいれば、自分の宝石の自慢を大声で話している婦人もいます。買う気持ちもないのに高価でゴージャスな商品だけをつけてみたがる女性もいます。

 宝石展示会場では女性の本性が最も露骨にあらわれます。ここは実に『女の見栄の見本市』と言えます。このような会場では、人の本性のひとつである『見栄』が、露骨に見えてきます。したがって招待販売のビジネスとは、女性の見栄を相乗効果にして販売促進に結びつけることであるとも言えます。

  賢い客は自分の見栄をしっかりと内につなぎとめ、品物を選ぶのに自分を統率できます。しかし大抵の客は自分の見栄を興奮させ、自分の外に向けて振り回すのです。このためデザインの不似合いなものや、無理な価格の物を買い求めてしまう客が少なくありません。浮いた気持ちで選ぶので、後になって後悔する事になるのです。また会場には膨大な商品量に圧倒されて目移りが起こり、心が定まらず気分を壊し、不機嫌になってしまう人や、まわりの雰囲気に酔わされて欲しい物を絞りきれずに衝動的に決めてしまう人もいるのです。

・・・つづく。

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 AVAILABLE -利用する-

 

招待販売における消費者の賢い買い方は・・・
1:目標をはっきり持ってからその招待に応ずる事。
2:気に入った数点に絞込み、会場では仮予約にして後日決定する事。
3:価格を会場内でできるだけ値切っておくこと。
4:自分の身体にフィットするようにアレンジできる商品であること。そしてそのアレンジ価格もはっきりしておくこと。

  会場の雰囲気に飲まれず、むしろその雰囲気を楽しむことができれば、招待販売での買い物ほど気分のよいものはありません。賢い買い手になるために、普段から宝石店に立ち寄って担当者と懇意になることも必要です。ジュエリーを購入し愛用するようになると、永い使用期間中に必ず修理や調整が必要となります。自分の行き慣れた店を持つことと同じように、自分の担当者を定められればさらによいでしょう。

 買い手が自分にふさわしいジュエリーを選ぶのに、周りの人のアドバイスは大変参考になるものです。特にジュエリーをつけなれている先輩や友人の協力は実に貴重です。さらに販売員の信頼の置ける説明や、担当者の情報も大変役に立ちます。したがって自分の行き慣れた宝石店のイベントへの誘いが担当者から届いたときは、この機会をおおいに利用すべきでしょう。視点を変えると、宝石の展示会場とは絶好の宝石教室であるといえます。

・・・第7話へつづく。

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