ここは『やまやくらぶ』秘密の部屋。
更新しても気づかれないので、誰にも知られるはずのないコーナー。
迷い込んだ方も、ココをクリックすればすぐに出ることができます。

 

そして、くれぐれもこのコーナーのことは内密に・・・。

 

このまま読み進める方は、覚悟してください。
このコーナーでは、みなさんに楽しんでいただける自信がございません。
それでは第14回、はじまりはじまり。

 

 

本日のお題はこちら。

摩天楼…眩しくて涙がとまらない(エピローグ)】 

 

47stにある仕入れ先から、フォーシーズンズ・ニューヨークホテルのある57stまで、10ブロック。その程度の距離なら、歩いても12,3分で着く。
信号待ちを加味しても、15分以内か・・・。

 

とはいうものの、ここマンハッタンで信号待ちをするニューヨーカーは稀だ。
観光できた日本人ですら、2日目には赤信号など気にしなくなる。

 

大股で颯爽とマンハッタンを闊歩すること。
それこそがニューヨークツアーなのかもしれない。

 

昼間のマンハッタンでノロマなのは、バスとタクシー。
一方通行だらけのこの島で、ひとたびタクシーに乗ったなら、
10ブロック進むのにグルグルと遠回りしなければならない。しかも渋滞・・・。
言うまでもなく、バスは問題外。

 

それに比べ、地下鉄はかなり便利。縦横無尽に張り巡らされたマンハッタン島の地下鉄網は
色や番号で区別され、とてもわかりやすい。
ここに3日も滞在すれば、街中のいたるところにある穴(地下鉄入口)が目につくようになる。

 

さて、知人との待ち合わせ場所である、57stまでの10ブロック行脚の途中で、
中年の日本人女性に声をかけられた。
ガイドツアーの集合場所である、ヒルトンホテルの場所が分からないとのこと。
場所はすぐに案内できた。なぜならそこはヒルトンの目の前であったから。

 

夫人と一緒にロビーに入ると、問題はすぐに解決した。
その方法は簡単、ツアーの案内人はたいていA4サイズの名簿を持って、ロビーをウロウロしているものだ。
シャツに名札をつけ、腕時計を見ながらそわそわしていた男に声をかけ、夫人を無事に引き渡した。
夫人は去りぎわに、私に『サンキュー』と言ったのが印象的だった。

 

ところで、ダウンタウンのDeliで安っぽい紙のカップに、
なみなみと注がれるコーヒーは、飲み干すのに時間を要する。
75セントの、鬼のように熱いコーヒーは、購入してすぐには熱すぎて口も付けられない。
こぼすと手を火傷しそうなほどで、歩きながら飲むなどもってのほか、まずはその場で減らして、冷ます。

 

見知らぬ地で、一人で困り果てていた夫人の、安堵感に包まれた背中が、
すこし前の自分とリンクし、苦笑いがうかんできた。

 

手に持っていた、Deli仕立ての安コーヒーをようやく飲み干すと、
ヒルトンホテルのロビーにある、まるでオブジェのようなごみ箱に捨て、先を急いだ。

 

ニューヨークへ来てから1か月、いくつかの美術館と、数十にも及ぶギャラリーで学び、
ダイヤモンドをはじめ、ピアス、ブレスレッド、ブローチを十分に買い付け、
通いつめた古本屋では、洋書を大量に仕入れた。

 

あの日、単身この地へやって来て、必死にもがきながら沢山のことを感じ、
そして原寸大のちいさな、無力の自分と格闘した。
少し時をさかのぼって、これまでを振り返ってみようか・・・

 

【摩天楼…眩しくて涙がとまらない(あれから…)】につづく。
何かが見えるまで。内藤。

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【ほぼ内藤わたり】-第14球目-